この記事の要点

  • 4%を掛けるのは初年度だけ。翌年からは、決めた定額を物価に合わせて増やします。
  • 特定口座では税金がかかるため、生活費の25倍ではなく約27.8倍が必要な計算です。
  • 年金がある人は、年金で足りない分だけを資産から出します。必要な資産は大きく減ります。

4%ルールは、初年度に資産の4%で取り崩す金額を決め、翌年からは決めた定額を物価に合わせて増やしていく方法です。

もとになったのは、米国のFP、William Bengenの1994年の研究です。成り立ちは取り崩しの3学派で紹介しています。

日本で使うときに取り違えやすい点を、5つ順に見ていきます。

勘違い1「毎年、残高の4%を取り崩す方法だ」

4%ルールは、残高に率を掛ける「定率取り崩し」ではなく、決めた金額を引き出す「定額取り崩し」です。 4%は、初年度の金額を決めるためだけに使います。

資産が6,000万円なら、初年度は240万円です。その後は、残高が増えても減っても、この金額をもとに取り崩します。

ただし、ずっと240万円のままではありません。物価が2%上がれば、翌年は244.8万円に増やします。物価に合わせて増やす定額です。Bengenの研究も、のちのTrinity Studyも、物価に合わせて増やす場合を検証しています。どちらも、決まったインフレ率を仮定するのではなく、米国で各年に実際に起きた物価の上昇をそのまま当てはめています。

定率取り崩しなら資産はゼロになりませんが、相場が下がると使える額も減ります。4%ルールは定額なので、相場が下がっても同じ額を引き出し、資産が尽きることがあります。

勘違い2「インフレには対応できない」

4%ルールは物価に合わせて取り崩す額を増やすので、物価の上昇には対応しています。 インフレで買えるものが減るのは、同じ金額のまま取り崩し続ける場合です。

  • 定率取り崩し:使える額は相場で変わる。資産はゼロにならない
  • 4%ルール:物価に合わせて増やす定額。資産が尽きることはある
  • 金額を変えない定額取り崩し:使う額は一定。物価が上がると買えるものが減る

ただし、物価が上がれば取り崩す額も増え、資産はそのぶん速く減ります。物価に合わせられることと、資産がもつことは別です。

勘違い3「生活費の25倍あればいい」

25倍は、税金を考えない計算です。日本の特定口座では、約27.8倍が必要になります。

Bengenの研究は、米国の税金を後で払う口座(税繰延口座)が前提で、売却益への課税を入れていません。日本の特定口座では、売った利益に20.315%の税金がかかります。

売却代金の半分が利益(買値から2倍)なら、手元に残るのは売却代金の89.8425%です。

必要な倍率 = 1 ÷(4% × 89.8425%)= 約27.8倍

生活費が年240万円なら、6,000万円ではなく約6,680万円です。資産額ごとの手取りは税引後の取り崩し早見表にまとめています。

6,000万円で始めたら、何年もつか

6,000万円のまま手取りで240万円を使うと、毎年約267万円(資産の約4.452%)を売ることになります。 物価を差し引いた利回り(実質利回り)が0%なら、約22.5年で尽きます。

もっと長く続けるには、次の実質利回りが毎年必要です。

続けたい年数ごとに必要な実質利回り
続ける年数計算上の実質利回り
20年−1.1%
25年0.8%
30年2.0%
35年2.7%
40年3.2%

初期資産の約4.452%を毎年の年末に売る固定モデル(手取り4%・特定口座〈源泉徴収あり〉・売却代金の50%が利益)。利益の割合と手取り率は一定。毎年同じ利回りの単純計算で、安全な率を示すものではありません。

計算式は w = r ÷(1 −(1 + r)の−n乗) です(w=毎年売る割合、r=実質利回り、n=年数)。毎年同じ利回りという単純な前提で、相場の上下や運用コストは入れていません。

円で暮らすこと

米国の研究の数字は、ドルで運用し、ドルで暮らす前提です。

外国の資産で運用していると、円高のときは円に換えた額が減り、円安のときは増えます。どちらに動くかはわからないため、円で必要な生活費と比べて考えます。

勘違い4「過去のデータで検証済みなら安心だ」

過去の成功率は、米国の過去データでの結果です。これから日本で暮らす人の成功確率ではありません。

「Trinity Study」と呼ばれる研究の1999年版は、1926〜1997年の米国のデータで、初年度4%・30年の取り崩しを調べました。

米国の過去データによる成功率(初年度4%・30年)
研究での配分30年の成功率
株式100%98%
株式75%・債券25%100%
株式50%・債券50%95%

Cooleyほか(1999)Table 2。1926〜1997年、物価調整あり・月末取り崩し。重なり合う43の30年間の結果です。

配分は研究の条件で、この記事が勧めるものではありません。

ここでの「成功」は、30年後に残高が1円でも残っていたことです。途中で資産が大きく減ったときの不安や、予定外の出費は数字に表れません。また、43の期間は互いに多くの年が重なっていて、別々の43回の結果ではありません。

30年で足りるか

この研究が調べたのは最長30年です。 なお、Bengenの研究は50年まで扱っています。

2025年の簡易生命表では、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。同じ表の生存数から計算すると、65歳の人が95歳まで生きる割合は男性約11.0%、女性約27.9%になります。

平均より長く生きる場合も、取り崩す年数に入れておく必要があります。

勘違い5「必要な額は、生活費だけで決まる」

資産から出すのは、生活費のうち年金で足りない分だけです。 この勘違いだけは、知ると必要な額が減ります。

生活費が月20万円、税金などを引いた後の年金が月15万円なら、足りないのは年60万円です。27.8倍で約1,670万円。生活費の全額で計算した約6,680万円の4分の1です。

ただし、年金を受け取る前の生活費や、予定外の出費は別に必要です。

年金の額は人によって大きく違います。2026年度の「モデル年金」は夫婦で月237,279円ですが、夫が平均的な収入で40年働き、妻がずっと扶養に入っていた世帯の額です。ねんきん定期便などで、自分の見込み額を確かめます。

何を確かめればよいか

「4%で大丈夫か」より先に、次の4つを確かめます。

  • 年金で足りない分は、年いくらか
  • 何年分を取り崩すか
  • 税金を引いた後に、いくら残るか
  • 資産の値動きと為替が、円の生活費にどう響くか

この記事が扱っていないこと

この記事は、特定の取り崩し率や商品・配分を勧めるものではありません。社会保険料、配当、年金の受け取り開始時期、相場に応じた支出の調整は計算に入れていません。

口座ごとの使い分けは、特定口座・NISA・iDeCo、どの順で崩すかで扱っています。

よくある質問

毎年、資産の4%を取り崩せばいいのですか?

いいえ。4%ルールは、毎年の残高に4%を掛ける定率取り崩しではなく、定額取り崩しです。4%を掛けるのは初年度だけで、翌年からは決めた定額を物価に合わせて増やします。

物価が上がったら、取り崩す額はどうなりますか?

物価の上昇に合わせて増やします。ただし、そのぶん資産は速く減ります。インフレのときに資産が尽きないことを保証する仕組みではありません。

NISAなら、4%のまま使えますか?

NISAの売却益には税金がかからないので、この記事の27.8倍の割り戻しは要りません。ただし、値下がりや為替、長生きへの備えは残ります。

成功率95%なら、十分ではないのですか?

95%は米国の過去データでの結果で、これから自分の資産がもつ確率ではありません。失敗したときの暮らしへの影響も考える必要があります。

日本では何%が適切ですか?

この記事は、適切な取り崩し率を示すものではありません。年金で足りない額、取り崩す年数、税金、円での生活費をそろえて考えます。

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主な出典

論文・制度の確認日:2026年10月16日。倍率と表1は、この記事で前提を置いて計算したものです。