この記事の要点
- 健康寿命は平均寿命より、男性で約8年半、女性で約11年半短くなっています(2022年)。
- 高齢の単身世帯の生活費は、75歳以上が65〜74歳より約2割少なくなっています(全国家計構造調査2024)。
- モデルケースでは、生活費の下がり方に合わせると、65〜74歳に月24.9万円、75歳以降に月20.0万円を使って100歳まで持ちます。
- 均等に使う場合(月21.4万円)との差は年約42万円で、予算10万円の国内旅行なら年4回行ける額です。
資産はあるのに、取り崩して使うことにためらいがある人で、次のようなことが気になっている人に向けた記事です。
- 100歳まで生きたら、足りなくなるのではないか
- 介護にお金がかかるかもしれない
- それでも、体が動くうちに旅行や趣味に使いたい
健康寿命は、平均寿命より男性で約8年半、女性で約11年半短くなっています。また、統計では75歳以上の生活費は65〜74歳より約2割少なくなっています。こうした数字を手がかりに、資産4,000万円・年金が手取り月14万円の65歳のモデルケースで計算しました。生活費の下がり方に合わせると、65〜74歳に月24.9万円、75歳以降に月20.0万円を使っても、100歳まで持ちます。均等に使う場合の月21.4万円との差は年約42万円で、予算10万円の国内旅行なら年4回行ける額です。
健康寿命は、平均寿命より8〜12年短い
日常生活に制限なく暮らせる期間の平均(健康寿命)は、平均寿命より男性で約8年半、女性で約11年半短くなっています。
厚生労働省の推計では、2022年の健康寿命と平均寿命は次のとおりです。
- 男性: 健康寿命72.57歳、平均寿命81.05歳(差8.49年)
- 女性: 健康寿命75.45歳、平均寿命87.09歳(差11.63年)
健康寿命は、国民生活基礎調査で「健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」と聞かれ、「ない」と答えた人の割合をもとに計算します。影響の内容には、着替えや入浴などの日常の動作のほか、外出や運動、仕事・家事が制限されることも含まれます。寝たきりや要介護の状態だけを指すものではありません。
これらは0歳時点の平均で、一人ひとりの制限が始まる年齢を示すものではありません。
この記事では、長生きに備えて、資産が100歳までなくならない計画で考えます。ただ、将来も今と同じように旅行や趣味を楽しめるとは限りません。100歳まで備えることと、いつ使うかは、分けて考えます。
資産が多くても、老後の心配がなくなるとは限りません。金融経済教育推進機構の2025年の調査では、20〜79歳の単身世帯のうち、金融資産が3,000万円以上ある層の39.4%が老後の生活を心配しています。同じ層で、お金を持つ目的として「とくに目的はないが、金融資産を保有していれば安心」を挙げた人も23.7%いました。
生活費は、75歳を過ぎると約2割下がる
高齢の無職単身世帯の生活費は、75歳以上が月13.8万円で、65〜74歳の月17.2万円より約2割少なくなっています。
| 年齢 | 1か月の消費支出 | 世帯主の平均年齢 |
|---|---|---|
| 65〜74歳 | 17.2万 | 70.0歳 |
| 75歳以上 | 13.8万 | 82.6歳 |
総務省「令和6年全国家計構造調査」。1か月平均の消費支出を万円単位に丸めています。元の金額は171,924円と138,285円です。別の人たちを同じ時点で比べた数字です。
75歳以上の生活費は、65〜74歳の約0.804倍です。この記事のモデルケースでは、この比率を使って75歳以降の生活費を設定します。
この数字は、別の人たちを同じ時点で比べた平均です。同じ人が年をとって生活費を下げた記録ではありません。一人ひとりの生活費が同じように下がるかどうかは、この記事の計算の外にあります。
Aさんの場合:生活費に合わせると、65〜74歳に月24.9万円
架空のモデルケースのAさんでは、生活費の下がり方に合わせると、65〜74歳に使える額が均等に使う場合より月3.5万円増えます。年約42万円で、予算10万円の国内旅行なら年4回行けます。
Aさんは、この記事のために置いた架空のモデルケースです。実在の人物ではありません。
- 65歳、単身、持ち家
- 金融資産は4,000万円。うち540万円は介護費として預金で別にとっておき、残りの3,460万円を特定口座から取り崩す
- 年金は手取りで月14万円
- 100歳で取り崩し用の資産3,460万円を使い切る計画。介護費の預金540万円は別枠
計算の前提は、税引後の取り崩し早見表と同じです。特定口座は源泉徴収ありとし、利益への税率は20.315%、売却代金の50%が利益、実質の利回りは0%と置きました。金額はすべて今のお金の価値で、年金の手取りも月14万円のままとします。
比べたのは、次の2つの使い方です。
- 均等に使う: 100歳まで毎月同じ額を使う
- 生活費の下がり方に合わせる: 75歳以降の額を、65〜74歳の0.804倍にする
| 使い方 | 65〜74歳(月額) | 75歳以降(月額) |
|---|---|---|
| 均等に使う | 21.4万 | 21.4万 |
| 生活費の下がり方に合わせる | 24.9万 | 20.0万 |
介護費540万円は預金で別にとっておき、残りの3,460万円を特定口座から取り崩します。売却代金の50%が利益、実質の利回り0%で計算しています。
月3.5万円の差は、年にすると約42万円です。予算10万円の国内旅行なら、年4回行けます。
75歳以降の月20.0万円は、均等に使う場合の月21.4万円より少なくなります。それでも、統計にある75歳以上の単身世帯の平均(月13.8万円)を上回る額です。
介護費は、使わない前提で別にとっておく
Aさんの計算では、介護費として540万円を預金で別にとっておき、取り崩しの計算には入れていません。
将来、介護の費用がかかることもあります。生命保険文化センターの2024年度の調査では、介護費用の平均は次のとおりでした。
- 住宅の改修や介護用ベッドの購入などの一時費用: 47.2万円
- 月々の費用: 9.0万円(在宅で5.3万円、施設で13.8万円)
- 介護の期間: 55.0か月(約4年7か月)
平均額と平均期間を掛けると、47.2万円 + 9.0万円 × 55.0か月で約542万円です。これは計画の目安にするための概算で、実際にかかった総費用の平均ではありません。施設で長く介護を受けると、この額を大きく上回ることもあります。
預金で持つと、売るときの税金がかからず、相場の影響も受けません。使わずに済めば、最後まで手元に残ります。
まとめ:使う時期にメリハリをつけて、元気なうちを楽しむ
- 健康寿命は、平均寿命より男性で約8年半、女性で約11年半短くなっています
- 生活費は、75歳を過ぎると統計上約2割下がります
- Aさんの場合、生活費の下がり方に合わせると、65〜74歳に月24.9万円を使えます。均等に使うより年約42万円多く、予算10万円の国内旅行なら年4回行ける額です
- これは、介護費540万円を別にとっておいたうえでの計算です
100歳まで備える計画でも、毎年同じ額を使う必要はありません。体が動くうちに行きたい場所や、始めたい趣味があるなら、それを最初の10年に組み込んだ計画も立てられます。お金の心配だけで元気な時間を見送らずに済むよう、いつ使うかから考えてみてください。
この記事が扱っていないこと
この記事は、前半に多く使うことや、特定の取り崩し率・商品・配分を勧めるものではありません。
- 自分の生活費が、年齢とともに下がるかどうか。統計は平均で、一人ひとりの暮らしを表すものではありません
- 相場が下がったときの見直し方。ガードレールで「減らす時・増やす時」を決めるで扱っています
- 口座ごとの使い分け。特定口座・NISA・iDeCo、どの順で崩すかで扱っています
- 住民税・社会保険料。株を取り崩して暮らしても、住民税非課税世帯になれる?で扱っています
- 年金の目減り(マクロ経済スライド)、繰上げ・繰下げ受給、持ち家の修繕や住み替え、相続
- 将来の税率や利益の割合の変化、介護費として持つ預金の物価による目減り
自分の条件で計算の前提を整理したい場合は、相談のご案内をご覧ください。
よくある質問
健康寿命とは何ですか?
健康上の問題で日常生活が制限されずに暮らせる期間の平均です。2022年は男性72.57歳、女性75.45歳で、平均寿命より男性で8.49年、女性で11.63年短くなっています。制限には、外出や運動の軽いものも含みます。
老後の生活費は、年をとると下がるのですか?
統計では下がっています。2024年の全国家計構造調査では、高齢の無職単身世帯の消費支出は、65〜74歳が月17.2万円、75歳以上が月13.8万円でした。ただし別の人たちを同じ時点で比べた平均で、一人ひとりの生活費が同じように下がるとは限りません。
前半に多く使うと、後で足りなくなりませんか?
この記事の計算は、75歳以降の生活費が65〜74歳の約8割になる前提で、100歳まで資産が持つように組んでいます。75歳以降の生活費が下がらなかった場合は、その分だけ早く資産が減ります。
介護費は、いくら別にしておけばいいですか?
決まった額はありません。生命保険文化センターの2024年度調査の平均額・平均期間を使うと、47.2万円 + 月9.0万円 × 55.0か月で約542万円になります。これは概算で、一人ひとりの介護費を保証する額ではありません。この記事では540万円を預金で別にとっておく前提で計算しています。
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主な出典
統計・税率の確認日:2026年10月29日。金額の例は、この記事で前提を置いて計算したものです。
- 厚生労働省:健康寿命の令和4年値について(PDF)
- 総務省:令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果(PDF)
- 金融経済教育推進機構:家計の金融行動に関する世論調査 2025年
- 生命保険文化センター:介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?
- 国税庁:株式等を譲渡したときの課税
補足:計算の前提と式
介護費の預金540万円を除く3,460万円を、65歳から100歳までの420か月で取り崩す計算です。年金の手取りは月14万円、実質の利回りは0%、利益への税率は20.315%、売却代金の50%が利益とし、いずれも計算期間中は変わらないと仮定しています。金額はすべて今のお金の価値です。
売却後に手元に残る割合は、1 − 0.5 × 0.20315 = 0.898425です。
均等に使う場合の月額 = 14万円 + 3,460万円 × 0.898425 ÷ 420か月 ≒ 21.4万円。
生活費に合わせる場合は、75歳以降の月額を65〜74歳の月額の138,285 ÷ 171,924倍とします。65〜74歳は120か月、75歳以降は300か月です。
65〜74歳の月額 = (3,460万円 × 0.898425 + 14万円 × 420か月) ÷ (120か月 + 300か月 × 138,285 ÷ 171,924) ≒ 24.9万円。
75歳以降の月額 = 65〜74歳の月額 × 138,285 ÷ 171,924 ≒ 20.0万円。計算途中では丸めず、表示するときだけ四捨五入しています。
この条件での比較であり、将来の支出や資産が尽きないことを保証する計算ではありません。介護費の預金540万円は、取り崩し用資産がなくなる100歳時点でも、使っていなければ別に残ります。
